はじめに
「最近、スマホやパソコンを見る時間が長くなった」と感じていませんか?調査によれば スマホ利用時間は平日平均で3.66時間、休日では4.36時間 にのぼります(PR TIMES, 2024)。
20年前と比べると、画面を長時間見続ける生活が一般的になり、首や肩の筋肉に負担がかかる機会は確実に増えています。さらに「冷え」や「運動不足」も血流の悪化や筋肉の緊張を招き、肩こりの一因になると考えられています。
本記事では 科学的根拠に基づいた肩こり改善法 をわかりやすく紹介します。
科学的根拠の見方
- ⭐⭐⭐:信頼度が高い(多くの研究やレビューで効果が確認されている)
- ⭐⭐:中程度の信頼度(一定の効果が示されているが、さらなる検証が必要)
- ⭐:現段階では十分な裏付けが得られていない
肩こり改善に効果的な方法(科学的根拠あり)
運動療法 ⭐⭐⭐
肩こり改善に最も効果が期待できるのは 筋力強化を中心とした運動療法 です。
- 筋力・持久性トレーニングは痛み軽減に寄与する可能性(Cochrane Review, 2015)
- 僧帽筋や肩甲骨周囲の筋肉を強化する運動が有効とされています(Kay et al., 2012, JOSPT)
- 職場での特定運動プログラムは肩こり予防に効果を持つ可能性があります(Sjøgaard et al., 2014, Cochrane Review)
具体的な運動例
1. 腕引きダンベル体操(ダンベルローイング)
両手にダンベルを持ち、背すじをまっすぐに保ちながら肘を後方へ引く。肩甲骨を寄せる意識で10〜15回 × 2セット。

2. Y字バンザイ体操(僧帽筋下部トレーニング)
両腕を頭上にY字に伸ばし、肩甲骨を下げながら寄せる。10〜15回 × 2セット。

3. 体幹キープ(プランク)
肘とつま先で体を支え、頭からかかとまで一直線をキープ。20〜40秒 × 2セット。
ストレッチ ⭐⭐
ストレッチ単独では効果の裏付けは弱いものの、運動や生活習慣改善と組み合わせると有効性が高まります(Parazza et al., 2014)。
具体的なストレッチ例
1. 横向き首のばし(座位で実施可能)
椅子に座り、片手で頭を横に倒して首筋を伸ばす。左右20秒ずつ × 2回。

2. 背すじピーン胸ひらき
両手を後ろで組み、胸を開き肩甲骨を寄せる。20秒 × 2回。

3. ぐるぐる肩回し
肩を大きく前後に回す。前回し・後回し 各10回。
生活習慣・栄養 ⭐
生活習慣の改善も役立ちますが、現段階では十分な裏付けが得られていません。
- 睡眠・ストレス管理:就寝・起床の固定、短時間の休息を意識
- 栄養(マグネシウム/ビタミンD):慢性痛との関連はあるが肩こりへの直接効果は未確立(Veronese et al., 2017/Wu et al., 2016)
基本は食事から。サプリ利用は必要時に医療専門職へ相談を。
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品例 | 推奨量/目安量(成人) |
---|---|---|---|
マグネシウム | 筋肉の収縮や神経伝達をサポート。慢性痛との関連が研究されています。 | 大豆製品(豆腐・納豆)、ナッツ類、海藻 | 男性 340–370mg/女性 270–290mg(厚生労働省, 2025) |
ビタミンD | カルシウム代謝や骨・筋肉機能に関与。慢性痛との関連報告あり。 | 鮭、サンマ、卵黄、きのこ類 | 5.5µg/日(目安量, 成人)(厚生労働省, 2025) |
※サプリメント利用時は過量摂取に注意。マグネシウムは 350mg/日(厚生労働省 eJIM)、ビタミンDは 100µg/日(厚生労働省, 2025)が耐容上限量とされています。
注意点
- 強い痛み・しびれ・頭痛がある場合は 必ず医療機関を受診
- 本記事は「一般的な健康情報」を目的とし、診断や治療の代替ではありません
まとめ
- 運動療法 ⭐⭐⭐:肩こり改善の中心。僧帽筋・肩甲骨周囲筋を鍛える
- ストレッチ ⭐⭐:補助的に有効、運動と組み合わせると◎
- 生活習慣・栄養 ⭐:健康に有益だが十分な根拠は未確立
継続できる工夫こそが肩こり改善の近道です。
参考文献(本文引用順)
- PR TIMES. 「スマホ利用時間に関する調査」2024. ↩戻る
- Gross A, et al. Exercise for mechanical neck disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2015. ↩戻る
- Kay TM, et al. Exercises for mechanical neck disorders. J Orthop Sports Phys Ther. 2012;42(9). ↩戻る
- Sjøgaard G, et al. Specific exercises for preventing neck/shoulder pain. Cochrane Database Syst Rev. 2014. ↩戻る
- Parazza S, et al. Efficacy of stretching for the treatment of pain of cervical and lumbar spine: a systematic review. Phys Ther. 2014;94(10):1429–46. ↩戻る
- Veronese N, et al. Magnesium and chronic pain: a systematic review. Br J Anaesth. 2017. ↩戻る
- Wu Z, et al. Vitamin D supplementation and chronic musculoskeletal pain: a meta-analysis. Pain Physician. 2016. ↩戻る
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). ↩戻る
- 厚生労働省 eJIM. 「マグネシウム」解説ページ. ↩戻る
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